専門
微分方程式の数値解法における構造保存解法を主な対象として研究を行っています.
構造保存解法とは、系の重要な性質を数学的に再現することを保証する数値解法を言います.
そして、自分は 1990年代に離散変分導関数法と呼ばれる手法を開発し、これまで発展させています.
この手法は系の保存量や散逸量の多くが数学的には変分計算に基づいて示せることに着目したもので、
- 偏微分方程式を対象にできる
- 保存系だけでなく、散逸系も対象にする
- 対象が幅広い
- 再現する保存性、散逸性が「厳密」である
というような特徴を持っています.
特に最初の3つの特徴は、開発時の時代背景等もあり、他の構造保存解法より優れている点と考えています(最後の特徴は一般の構造保存解法が備えています).
そして、構造保存解法の常として離散変分導関数法は
- 得られる数値スキームが「良い」性質を持つことが期待できる
という実用上の利点を持ちます. この良い性質とは主に、
- 数値解の挙動が真の解のものと同様である
- 数値計算が安定に行える
- 非線形な数値スキームに対して数値解の存在が保証される
などで、これらは解析学的な手法で証明されたりします.
もちろん、これらの良い性質を得るために引き換えになる事柄もあります.
それらは主に計算コストに跳ね返るもので、
- 数値スキームが時空間方向(特に時間方向)に対称となるため、非対称性を導入して計算コストを下げる 数値計算の手法を用いることができない.
- 数値スキームが対象の微分方程式と同様の非線形性を持つため、計算コストが大きくなりがち
- 変分計算を離散的に行うことを基礎とするため、空間の離散化手法(メッシュの切り方)まで意識する必要がある
などといったものです.
しかし、こういった問題についても、優れた共同研究者を得ることなどにより、
近年ではひとつずつ解消することが可能となってきています.
現在では、本研究は多くの技法への適用ができる、それなりに大きな規模のものとなってきましたが、
まだまだ完全にはほど遠く、より発展させるべく努力が必要と感じています.