第 9 回(2005.06.20) -- データ簡易処理(表計算ソフトウェア)

この授業では表計算ソフトの扱いについて学習する.
データを生の数値として扱う「具体的なレベル」と, 機械的かつ抽象的にデータを扱う「抽象的なレベル」の間の存在として 表計算ソフトウェアは役に立つ.
この学習を通じてデータを抽象的に扱うレベルへのステップアップを望みたい.

表計算ソフトとは,現実の「帳簿」のイメージをそのままコンピュータ内部に再現することで, データの入力及び処理をコンピュータで行うソフトウェアである.
「帳簿」のイメージを再現することでとっつきやすくなっているのが利点であるが, これはそのまま,「抽象的なデータ処理が困難」になる欠点でもある.
また,データ処理が本質的に interactive であることから, human error が入り込む余地が大きく,結果には十全の信頼をおき得ないという致命的な欠点もある.
コンピュータに詳しくない人間が好んで使う表計算ソフトウェアであるが, データ処理に関しては上記のような欠点を自覚して用いないと 信頼性と有効性が失われる,と重々認識して用いるべきである.

OpenOffice : 表計算

本講義では,阪大情報教育システムで用意されている OpenOffice の表計算ソフトウェアを用いて, 授業を進める.
このソフトは,マイクロソフトの Excel (現時点で世界で最も多く使われているであろう表計算ソフト) とそれなりの互換性をもつとされているので,一通り慣れれば, 他の場面でもそう困ることはないだろう.

ちなみに… OpenOffice とは,次のようなソフトウェアである(OpenOffice.org 日本ユーザ会 web より引用).

ちなみに… 「OpenOffice の表計算」以外にもフリーで優秀な表計算ソフトは結構ある.
例えば,有名なところでは gnumeric などがあげられる. 大阪大学教育用計算機システムでも GNOME端末や kterm から gnumeric & とすることで使うことができるので,起動してみて比べてみてもよいだろう.

参考文献

表計算一般,という資料は少ないが, StarSuite, OpenOffice 等の名前で web を検索すれば十分な量の資料が集められる.
また,互換性が高いことを利用して, マイクロソフト の excel についての知識を得れば,その知識の大半が適用できるだろう.

起動, 終了方法等

起動
(画面左上の) アプリケーション → オフィス → StarSuite 7 → StarSuite 表計算

で起動する.

起動時に「セルスタイルの選択」を聞かれたらとりあえず「標準」を選択しておけばよい.

頻繁に使うようであれば,上記操作の最後で
(右クリック) → ランチャをパネルに追加する
として上のパネルにラウンチャを登録しておくと楽である.
アイコン of StarSuite 表計算
これは他のツールでも同様である.


終了, help
アプリケーションのメニューから選択すればよい. とくに迷うことはないだろう.

用語等

表計算ソフト独特の概念や用語,アイコン等の説明をしておこう.
下に,ほぼ起動時の表計算ソフトのイメージ図がある. その中で,説明を要すると思われる部分を説明する.

表計算ソフト全画面

セル
表計算ソフトで,データもしくは関数を納めておく「箱」.
データの場合はそのデータの値が,関数の場合は関数値が表示される.
格納するデータの形式を特に指定したい場合は,
右クリック → セルの書式設定

(メニューの)書式 → セル
で適切に選択すればよい.

セルの名前について 1
表計算ソフトでは一般に 列番号が A, B, C, ... と, 行番号が 1, 2, 3, ... とつけられており, セルは基本的にこの行列番号で指定(名前づけ)される.
例えば, 第 2 行 第 3 列目のセルは "C2" となる.

数式バー
セルの「中身」をそのまま表示する.
中身が関数の場合,どんな関数なのかを見るにはここを参照するのが良い. セル部分には「result」が表示されるが,数式バーには「how」が入っていると思ってもよい.
数式バーで直接データや関数を入力してもよい.

名前ボックス
指定しているセルの名前を表示する.
逆に,名前をこのボックスで指定すると該当するセル部分が表示される.

セルの名前について 2
セルには最初は「列 行」の形でしか名前がついていないが,
挿入 → 名前 → 指定 → 追加
などとすることで他に任意の名前を追加することができ,そうした名前がある場合はそれが表示される.
ある計算をした結果を他の関数から参照したい,というような場合にはこうした 「固定した名前」が便利に使える.

シート
セルが沢山集まり,一枚になっているその一枚分を 1シートとよぶ.
画面左下側にある「タブ」でシートを切り替えられる.

表計算ソフトでは一般に,何枚ものシートを束ねて一つの表計算の単位とし, これをブックとよぶ.
ファイルに保存されるのは基本的に 1ファイル = 1ブック である.

「和」張り付け
指定した範囲のセルの値の合計を出したいときに使う.
使い方は簡単なのでとくに迷うことはないだろう.
注意
単なる数値データでないデータ(日付など)がセルに入っている場合は, 合計に反映されるのかどうかマニュアル等で確認しておくこと.
直感と動作が異なる場合には痛い目にあうことがある.

「関数」張り付け
指定した(範囲の)セルに関してなんらかの関数を施して計算したい時に使う.
使い方は関数毎に異なるが,詳しい説明が出るのでそれほど迷わずに済むだろう.
ちなみに…
copy & paste を行って関数をあちこちに入力すると, ソフト側が「気を効かせて」参照するセルの番地を勝手に書き替えることがある.
こうしたときは,セルに名前をつけるか,絶対番地参照(マニュアルを参照せよ)などの機能を用いること.

使用する前のセッティング

こうした高機能ソフトウェアは,セッティングを注意深く行うかどうかで利用効率がまったく異なってくることが多い. そこで,まずは簡単なセッティング例を示しておくので, これを参考にして各自自分に適したセッティングを調べるのがよい.

セッティング例
ツール → オートコレクト → オプション
として不要なもの(すべての文を大文字で始める 等)を外しておく.

利用にあたっての tips

マニュアルを読めば分かるが,こうしたソフトウェアは利用効率を高めるための工夫が随所に施されている. こうした機能を完全に使いこなすのは難しいが,いくつかの tips を意識しておくだけでも随分違うので,以下に示したものだけでも把握しておくとよい.
なお,さらに興味があるものはマニュアル等を参照すること.

データの入力

表計算ソフトでは一般に,セルを(マウス等で)選択してから, データをキーボードから入力するとそのデータがそのセルに入力される.
入力が終わったら [Enter] を押すと,そのセルの入力が終わり,次のセル (右 か 下)がアクティブになり,続けての入力が簡単にできるようになっている.
# [Enter] を押した後右へ進むか下へ進むかは設定による.

実習 A1, A2, … A7 のセルに次の値(数値)を入力せよ.

  1
  2
  3
  4
  7
  3
  4

データの編集

入力したデータに間違いがあった場合などは,もちろん後から修正が必要である.
この際,修正にはセルの値を直接その場で編集しても良いが, 数式バーを経由するとはっきり内容がみられるのでより安全である.

実習 A4 のセルには現在「4」が入っているが,この値を「5」に修正せよ.

関数の利用

さて,入力したデータを分析してみるべく,(和を含む)関数を利用してみよう.
関数の利用は,基本的に

  1. 関数値を表示するためのセルを指定する.
  2. どのような関数を用いるのか,「関数」張り付け ボタンを用いて指定する.
    # 良く使うためか,「和」だけ別なボタンが用意されている.
  3. 引数(参照データ)などの指定を行う.

という順序で行う.
より詳しい点は関数毎に異なるため,そのつど出てくる説明文を読まないといけない.

理屈よりもここは実習で学んでみよう.

実習 -- 和

  1. セル A9 を指定し,アクティブにする.
  2. 「和」張り付け を押す.
  3. 「どの範囲のセルの和を求めるのか指定する」ための画面がでるので, A1 … A7 のセルをセル表示画面でマウスで指定するか, 範囲指定の部分で A1:A7 と入力する.
  4. 最終的に,A9 セルに 「25」が表示されることを確認する.

実習 -- 平均

  1. セル A10 を指定し,アクティブにする.
  2. 「関数」張り付け を押す.
  3. AVERAGE 関数を選択して「次へ」を押す. 「どの範囲のセルの平均を求めるのか指定する」ための画面がでるので, A1 … A7 のセルをセル表示画面でマウスで指定するか, 範囲指定の部分で A1:A7 と入力する.
  4. 最終的に,A10 セルに 「3.57」が表示されることを確認する.

実習 -- 標準偏差

  1. セル A11 を指定し,アクティブにする.
  2. 「関数」張り付け を押す.
  3. STDEVP 関数を選択して「次へ」を押す. 「どの範囲のセルの標準偏差を求めるのか指定する」ための画面がでるので, A1 … A7 のセルをセル表示画面でマウスで指定するか, 範囲指定の部分で A1:A7 と入力する.
  4. 最終的に,A11 セルに 「1.84」が表示されることを確認する.

実習 -- セルの名前づけ

次の「関数の copy & paste」 へ進むために, 番地が書き変わっては困る参照セルに名前をつけることを学んでおこう.
具体的には次のようにすればよい.

  1. セル A10 を指定し,アクティブにする.
  2. 挿入 → 名前 → 指定 → (heikin と入力する) → 追加
  1. セル A11 を指定し,アクティブにする.
  2. 挿入 → 名前 → 指定 → (hensa と入力する) → 追加

実習 -- 偏差値(^-^)

さらに,関数の copy & paste に慣れるために,A1,...,A7 のデータの偏差値を求めてみよう.
上で「heikin」と「hensa」という名前のセルを用意したが, それらが具体的にどう利用されるかに注意すること.

  1. セル B1 を指定し,アクティブにする.
  2. 「関数」張り付け を押す.

  3. STANDARDIZE 関数を選択して「次へ」を押す.
    これは正規化とよばれる計算である. 具体的には,
    (データ - 平均)/標準偏差
    とする計算で, データ値が 「平均 0, 分散 1 の正規分布」 ではいくつに相当するのかを求めることにあたる.
    そこで,
    数値 = A1
    平均 = heikin
    標準偏差 = hensa

    として指定し,OK を押す.

  4. 数式バーを確認 & 編集する.
    確認すると, =STANDARDIZE(A1;heikin;hensa) となっているはずである.
    そこでこれを編集して,
    =STANDARDIZE(A1;heikin;hensa) * 10 + 50
    と修正する.

  5. B1 セルに 「36.03」が表示されることを確認する.
    # これで A1 セルのデータの偏差値は求まったことになる.

  6. B1 セルの内容(関数)を B2,…, B7 にコピーする.
    具体的には, B1 セルをアクティブにしておいて, B1 セル右下に表示される小さな■をマウスで左クリックしたまま B7 セルまで伸ばしてから,クリックを離す,などでできるだろう.

  7. 最終的には下のイメージの様になるハズであるので,これを確認する.
    function applied

グラフ化

入力したデータや,分析結果をグラフ化して可視化するのも 表計算ソフトの重要な機能の一つである.
ソフトウェアの性質上あまり精緻なグラフは望むべきではないが, おおまかなものを描くにはなかなか手軽であるので, データはなるべく積極的にグラフにし,その性質を抽出することを常に心掛けよう.

グラフの作成は非常に簡単なので,次の実習を行うだけで分かるだろう.

実習

  1. マウスで A1 -- B7 のセルを選択する.
  2. (メニューの) 挿入 → グラフ… → 次へ>> → 種類を選んで → (以下略)
    としてグラフを作成する.
  3. タイトル等を適切に記入することにより, 最終的には下のイメージの様になるハズであるので,これを確認する.
    なお,作成したグラフは,選択すれば移動,拡大/縮小が自由にできるので, いろいろやってみるとよい.
    make a graph

データのファイルへの保存

最後にデータをファイルに保存する方法について述べておく.

基本的には
ファイル → 名前をつけて保存
とするだけであるが,その際にファイル形式をどうするかが問題である.
以下に,良く使うであろうと思われる三種類のファイル形式について述べておくので,よく理解し,場合に応じて使い分けられるようになろう.

■ OpenOffice 表計算ソフトで使えるファイル形式のうち主な三種類 ■
ファイルの種類 説明
StarSuite 6.0/7 表計算ドキュメント このソフトの独自形式のファイル…に見えるが,実は zip圧縮した XML ファイルということなので,可搬性はそこそこ高いと思われる. 少なくともデータ「だけ」ならいつでも利用できるだろう.
また,このソフトで指定できる機能の全てが保存されるはずなので,こ のソフトを使う限りこの形式で保存しておくのがよい.
マイクロソフト Excel 97/2000/XP マイクロソフトの Excel 最新版と互換性がある,とする形式のファイル.
コンシューマレベルで利用されている OS のほぼ大半が MS-windows である現実を考慮すると, この形式で保存することにはそれなりの意味があるだろう.
ただし,マイクロソフトの Office シリーズのファイル形式は次のバージョンから XML を用いたものになるということなので, そういう意味ではマイクロソフトの方が OpenOffice より遅れを取っている,ともいえるだろう.
テキスト CSV Comma Separated Values の略. データがカンマで区切られて並ぶテキスト形式.
テキストだけでデータが表されるため,完全な可搬性,汎用性を持つ. 異なるアプリケーション間でのデータ交換や,長期間のデータ保存に適している.
非常に重要なデータは必ずこの形式でも保存しておくことを勧める. この形式ならば OS もアプリケーションにも依存せず常に扱える.
ただし,セルに色を付ける,フォントを指定する,揃えを指定する, など,データ本体ではなく「見た目に関する情報」はまったく保存されないと思った方がよい.

実習 これまで行った作業を,上の三種類の形式のファイルで保存せよ.




最終更新日 … $Date: 2005-06-14 14:08:03+09 $
Valid CSS! Valid XHTML 1.1!